医療事故分野の詳細説明
医療過誤
どういった場合に賠償請求できるか?
分かりやすい例でいえば、担当医や医療従事者が、手術や投薬・看護方法などにミスがあった場合、担当者及び雇主である医療機関は、患者との医療契約上の債務不履行責任または不法行為責任を負います。
この他、医療機関は、重要な手術や治療の実施に当たり、その危険性や他の選択肢等を患者に説明すべき義務があります。この説明義務を怠った結果、患者自身がどのような治療方法を選択するかの機会を失った場合も、患者側は慰謝料を請求可能です。
証拠の入手・確保
医療機関の過失の立証責任は患者側にあります。
過失の対象となる行為 そして、当該行為が一般的に適切なものでなかったこと も患者側に立証責任があります。
●カルテの開示
まず、カルテの開示を求めましょう。
昔は、裁判所を通じた証拠保全が一般的でしたが、現在は、患者またはその遺族から開示請求があれば、厚生労働省からの通達に沿って、大多数の医療機関はカルテ開示に応じていますので、証拠保全手続きは少なくなりました。
しかも、現在、電子カルテを採用する病院が非常に増えています。
昔、紙に手書きしていた時代は、ドイツ語や英語の医療用語の日本語への翻訳というよりも判読困難な文字の翻訳を期待して翻訳会社にオーダーすることもしばしばでした。紙カルテの場合、医療事故後の改ざんが比較的容易です。
これに対して電子カルテの場合、修正歴が残りますので、請求すれば修正歴まで取得することも可能です。
医療機関がカルテ開示に応じない、修正歴を隠している疑いがあるといった場合には、裁判所を通じた証拠保全を申し立てます。裁判所の決定は予め医療機関に通知されず、証拠保全に赴く予定時刻の少し前に執行官を通じて決定書を送達することになっています。
●専門医への意見照会
取得したカルテを分析し、どのような問題点があるかが、医学の素人でも一目瞭然の事案はさておき(手術具の体内置き忘れ、間違った薬剤の点滴・注射等)、医療機関がすぐには過失を認めそうにない医学的知見がないと判断できないような論点については、別途専門医へ意見照会するのが一般的です。
●争う手段
いきなり裁判はコストの面でもハードルが高いとお考えの場合には、仲裁機関として、簡易裁判所の調停、公益社団法人民間総合調停センター*1等があります。大阪簡易裁判所など大規模庁では医師の調停委員もおられるようです。
*1 大阪市北区西天満1-12-5 大阪弁護士会館1階
TEL:06-6364-7644
HP :https://minkanchotei.or.jp/