離婚・養育費・財産分与・慰謝料・年金分割 離婚前の婚姻費用分担の詳細説明
離婚にまつわる問題
離婚問題には、離婚を決めるだけでなく、未成年のお子さんがいる場合には親権者を父母いずれに定めるのか、養育費を月額幾らとするのか、お子さんとの面会交流をどうするのか、婚姻後、夫婦で一緒に築いた財産をどうするのか、年金分割をどうするのか、離婚原因を相手方が作った場合に慰謝料の支払を求めるのか等、金銭面も含めた解決しなければならない多くの問題があります。
これらの様々な問題に対し、弁護士は、ご依頼者様と相談しながら、将来の生活状況も予測した上で、バランスのとれたより良い解決方法を模索していくことになります。
今、この時点でベストだと思った解決が遠い将来残念なことにならないよう、当事務所では、5年先、10年先の状況を見通した上で、後々も、ご自身そしてお子様にとっても、良い解決だったと思って頂けるような解決策のご提案を心がけています。
相談に際しては、できる範囲で結構ですので、下記の書類等ご準備・ご持参下さい。
① 戸籍や住民票
② 双方のご収入(年収)に関する書類(例えば、源泉徴収票、市民税・府民税証明書、確定申告書、給与明細書など)
③ 双方の財産に関する書類(例えば、登記簿謄本、預貯金口座通帳、生命保険証書、株取引を示す資料、車検証の写し、住宅ローン等の資料など)
④ 離婚原因となった事実の存在の証拠となるような資料(例えば、写真、診断書、ラインの履歴等)
なお、令和6年5月に民法の一部改正法が成立し公布されています。この改正法(以下「改正法」といいます。)では親権等を中心に規定の見直しがされており、令和8年5月24日までの間に改正法が施行される予定です。以下ではこの改正法による説明も適宜加えながら解説します。
離婚の請求
離婚について、夫婦間で話合いができるのであれば協議離婚で解決できることが望ましいのですが、そのような話合いができない場合、家庭裁判所の調停を利用し、それでも合意に達しなければ離婚訴訟を提起することになります。我が国では、離婚についてはまず調停で話し合いをし、それでも解決しない場合に初めて訴訟提起をするということが法律上定められています。これを「調停前置」といいます。
調停は、基本、話し合いですので、離婚の理由は原則問われませんが、訴訟となると、離婚原因がなければ離婚は認められません。離婚原因とは、民法770条1項の1号から5号までに規定されている事由(改正法では、同条項4号の重度の精神障害が削除されました。)をいいますが、要は婚姻関係を続けていくことが難しいといえるような重大な事由があることをいい、配偶者の不貞がその典型例の1つです。
調停で話し合いが合意に達すればよいのですが、合意ができず、裁判となると、証拠が必要となります。そのためには予め、ご依頼者様と弁護士とが話し合いながら、順次証拠集めをすることが必要となります。
親権者の指定
離婚に際し、未成年のお子さんがいる場合、父母いずれかをお子さんの親権者と定めることが必要になります。従前は、当然に母が親権者となると考えられてきたところがありますが、現在では、お子さんの年齢やそれまでのお子さんとの関わり等、様々な事情を総合的に考慮して決めていくことが必要となっています。
更に、令和8年5月24日までに施行予定の改正法のもとでは、父母の共同親権も選択できるようになります。共同親権を選択した場合、離婚後も父と母が婚姻中と同じくお子さんの親権者となり、お子さんの養育や進路を決めるにあたり重要な判断は、原則として父母が共同して親権を行使することが必要となります。例えば、高校や大学、あるいは就職などの進路の選択、心身に影響を及ぼす重大な医療行為等の場合などです。
但し、共同親権については、日々の生活の中で生じる身上監護に関する行為で子に対し重大な影響を与えないもの、父母の一方が親権を行使できない場合や子の利益のために急迫の事情があるときには一方の親権者が単独で親権を行使することができます。また、父母に意見相違がある場合には親権行使者を家庭裁判所に決めてもらうことができます。
養育費
養育費とは、離婚が成立した場合、経済的に未だ自立できていないお子さん(未成熟子といい、未成年とは区別されます。現在18歳で成人になりますが、大学生等は経済的に自立できていないことが多く、この場合、未成熟子として養育費の対象となります。)を監護している親(監護親といいます。)に対し、監護していない親(非監護親といいます。)から毎月支払われるお子さんの生活費等の分担金のことをいいます(民法766条1項)。この養育費は、原則、双方の収入額に基づいて決められることになります。
養育費の金額を算定する際の目安として、最高裁判所が公開している算定表(https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html)を参考にされるとよいでしょう。
改正法では、法定養育費という制度が新たに設けられました。これは離婚と同時に養育費が決められればよいのですが、離婚時には養育費が定められず、その後養育費が求められるような場合、離婚後、その取り決めができるまでの間のお子さんの生活費の最低額(別途国が定めることになります。)について、非監護親に負担させるものです。
面会交流
面会交流は、父母が離婚し、未成年の子が父母いずれかと生活するようになった場合に、子の心身の健やかな成長を図るためには、一緒に生活していない親との関係も大切との判断の下、認められている制度です(民法766条1項)。
具体的には、子が非監護親と定期的に会うなどして共に過ごし、子と非監護親との関係を維持するものです。
調停や審判でその内容が決められますが、子の年齢などをも踏まえ、面会の頻度や面会時間、引渡場所等を中心に面会交流のルール化が図られることになります。
以上は、離婚に伴う面会交流ですが、離婚前に別居状態となり、未成年の子と非監護親が生活を別にした場合でも、未成年の子と非監護親との面会の問題があります。これまでこの点の明文の規定はありませんでした。令和8年5月24日までに施行予定の改正法では、この点について明文化され、離婚後と同様に、調停や審判で面会交流のルール化を図り、その枠の中での親子交流が図られることになります。また、改正法では子の利益のために特に必要があるときは、これまで認められていなかった祖父母等と子との交流実施についても定められました。
財産分与
財産分与とは、離婚に伴い、夫婦の一方から他方に対し、一定の財産を分与する制度です。具体的には、婚姻中に夫婦で築いた夫婦共有財産から夫婦の共有債務、例えば、住宅ローン等を控除し残りを夫婦で分け合う制度です。
- 財産分与の種類
①夫婦で築いた共有財産を分け合う清算的財産分与、②離婚に伴い、生活に支障が生じる一方配偶者に対する他方配偶者からの扶養的性質を有する扶養的財産分与、③一方配偶者に慰謝料支払義務が生じる場合に、損害賠償ではなく、財産分与でその点を補填する補償的財産分与とがあります。もっとも、ほとんどは、①の清算的財産分与であり、②③は例外的なものとなります。
この財産分与は、離婚調停、離婚訴訟の中で検討され実現されることが多いのですが、離婚後、財産分与を求める調停や審判を申し立てることで、事後的に財産分与を実現することができます。現行法では、請求権の時効は離婚成立の翌日から2年間とされていますが、施行予定の改正法では5年となりました。いずれにしても期間が比較的短く限定されていますので注意が必要です。 - 財産分与の対象財産
⑴ 対象とならない財産
夫、妻それぞれが婚姻前に取得していた財産や婚姻中であっても相続や贈与により夫、妻がそれぞれ取得した財産は、特有財産といい、夫婦共有財産にはならず、財産分与の対象とはなりません。
また、婚姻中であっても別居により夫婦共有財産を築けなくなった以降に取得した財産も原則対象とはなりません。
⑵ 分与の対象となるかを判断する基準日
夫婦共有財産の形成ができなくなった時、具体的には別居の日が原則として基準日となります。
⑶ 金額評価の基準日
財産分与の対象となる財産の評価は、分割時となります。
具体的には、離婚と同時に財産分与する場合には、離婚直前の時価額、離婚後しばらくして財産分与する場合には、財産分与を行う直前の時価額となります。 - 分与の割合
分与の割合は、原則2分の1ずつです(2分の1ルール)。
但し、一方配偶者に特殊な能力や技術等があり、そのため、特別に高額な収入を得ることができた結果、大きな共有財産が形成できたような場合には財産形成における寄与に差があるとして、その分与割合が変えられることがあります。 - 分与方法
分与の方法は、財産分与対象財産を金銭的に評価し、その総合計額から債務を控除した残額に基づき、それぞれの分与額を計算して、具体的分与を行うことになります。原則は、金銭の給付によることが多いのですが、金銭の支払いのほかに物の引き渡し、不動産の登記義務の履行その他の給付を命じることができます。 - 弁護士委任について
財産分与の対象となる財産・その評価の方法は、かなり複雑で計算も厄介です。ある程度の財産をお持ちのご夫婦の場合には、弁護士を依頼することをお勧めします。
慰謝料
離婚に伴い慰謝料の支払いが問題となることが多くあります。
その典型的な例は、配偶者が不貞行為をし、その結果、離婚せざるを得なくなったような場合、離婚を求める他方配偶者から離婚とともに慰謝料としてその支払が求められる場合です。簡単な言い方をすると、貴方の不貞のせいで離婚せざるを得なくなった、この精神的苦痛を慰謝するため、一定の金銭を支払って下さいというものです。法的性質としては、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求の1つで、不貞行為の相手と配偶者とが連帯債務者となります。
問題は不貞行為をどうやって証明するか、証明できるかという点であり、いざ行動を起こす前に是非弁護士に相談することをお勧めします。
年金分割
夫婦が離婚する際、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額、標準賞与額)を当事者間で分割してそれぞれの厚生年金記録の一部とすることができます。これを年金分割といいます。
- 年金分割の種類
合意分割と3号分割の2種類ありますが、いずれも年金事務所へ分割請求手続をする必要があります。
⑴ 合意分割
双方の合意か、裁判手続(調停、審判、判決)により按分割合が定められ、それに基づいてお近くの年金事務所に年金分割請求をすることで、婚姻期間中の厚生年金記録が分割されます。
⑵ 3号分割
厚生年金の第3号被保険者からの請求により、平成20年4月1日以降の婚姻期間中の3号被保険者期間における相手方の厚生年金記録を2分の1ずつ、当事者間で分割する制度です。請求に当たっては、按分割合の合意や裁判手続は不要で、按分割合は2分の1と決まっていますので、年金事務所に年金分割請求の手続を執ってください。 - 期限
離婚成立の翌日から2年以内にしなければならず、放置していると、この年金分割請求はできなくなりますので、注意が必要です。なお、改正法が施行されますと、この期間は5年となる予定です。
既に離婚等が成立し、相手方が死亡した日から起算して1カ月を経過した場合も、たとえ離婚後2年以内であったとしても請求できなくなります。